栃木県
2010年2月21日(日) 同伴者 なし (マイカー利用日帰り) |
自宅 03:30===(首都高速・東北自動車道)===那須IT===(ボルケーノハイウェー)=== 06:30大丸温泉駐車場 07:00---峠の茶屋 ---09:30朝日岳東南稜取付09:40---14:00朝日岳山頂14:20---15:10 峰の茶屋跡避難小屋15:30---16:50大丸温泉駐車場17:10===(ボルケーノハイウェー)===那須IT ===(首都高速・東北自動車道)===21:50自宅着 |
一般登山道より望む朝日岳東南稜
今期の冬山登山は厳冬期の最初で最後になるであろうと単独でも可能な那須に決めた
30数年前の2月に同ルートを登っているが3年前に眺めた朝日岳の東南稜は
単独でも問題なく登れるルートだと確信したからだった
核心部のギャップ周辺をクリアーできれば他は然程問題は無かろうと安易に考えていた
大丸温泉駐車場から いざ出発 |
2月は那須岳ロープウェーも運休中 |
冬季は峠の茶屋までの車道が積雪による通行止めになり大丸温泉駐車場からの出発になる
無雪期より約1時間余計に労力を必要とするが それもまた楽し
幸いにして天候は良好
好天のチャンスを生かすために那須駐車場のライブカメラを決行前の1ヶ月間は
気圧変化による状況を克明に観察していたので前日に間違いなくドピーカンに成ることは確信していた
便利な時代になったものだなぁ〜と しみじみ感じます
峠の茶屋の駐車場も一面雪の原 |
登山道の鳥居もご覧の通り潜れません |
朝日岳東南稜が目前になる |
大丸駐車場〜ロープーウェー〜峠の茶屋と車道を何回か横断しながら夏道通りに登り
真白き雪山へ来れたことが嬉しくて仕方なかった
しかし年齢からくる へタレは情けない限りで平素からの体力維持がなってないことを知る
高山植物保護の看板より明礬沢へ下る |
堰堤より真上に詰めるルンゼに取付く |
ルンゼの傾斜が落ちた地点より上部を |
こんなところに「高山植物」が? と書かれた案内板でアイゼンを着装していると
若きクライマーが素通りして取付点目指して先行していった
一番乗りは彼らに譲り 後から追うように取付の堰堤目指して雪面の安定している箇所を下る
堰堤で登攀前の準備休憩していた若きクライマーに追いついた
彼らは(ヘルメット・ガチャ類一式・ピッケル・アイゼン・バイル・ザイル)と完全武装
アウタージャケットも今風で格好が良さそうだった
彼らが声を掛けてくれ「東南稜ですか?」と訪ねられ 「はいそうです」と返答する
私の装備を見て東南稜を攀じる姿には見えなかったのかも知れない?
不審げに 「以前に登った事はあるのですか?」とも訪ねられた
「25年位前に登った事がありますので2回目です」と返答
しかし帰宅してから回想すると35年前のことだった(笑)
彼らに東南稜の難易度などを訪ねられたので若くてしっかりした装備の彼らなら
問題は無かろうと「悪場は然程でもないので体力だけあれば十分だよ!」とジョーク調で答えた
それにしてもノーヘル・ノーガチャ・ノーザイル・ノーバイルの無防備な姿から彼らはどう見えたのだろうか?
そして彼らは先行して目前のルンゼ(然程の傾斜ではない)を登って行った
いよいよ西側壁より登攀開始 |
東南稜上に出た地点より上部 |
ギャップ手前の岩峰 |
私はマイペースで急がなくても良かろうと思えど先行パーティーの姿が小さくなると
自分も行かねばと気合を入れ取り付くことにする 厳冬期岩稜ハイクの始まりです
本来なら東南稜末端にある3つの堰堤の一番下から取り付くのが一番楽なのであるが
今回は一番上の堰堤から登りだした直上するルンゼを150m位登ると広く開けた雪面に出る
ここより東南稜の西側にあたる側壁を攀じたのであるが見た目では楽勝に見えるがなかなか手強かった。
60度以上ある急な岩と雪が転落の恐怖を誘うが落ちれば50m以上は止まらないのであろう
結果は押して知るべしであるから絶対に滑落は許されない
ここを登れないのなら東南稜を登る資格など無かろうと奮起して息絶え絶えで稜上まで登り着いた
ルート上でこの側壁が一番の難所だったかも知れません
雪も付着無しでもアイゼン着装で攀じる |
ギャップをクリアーした地点より下方を |
ギャップ周辺の東側 |
稜上に上がった地点の上方100m位上にギャップ手前のピナクルが雪も纏わずに構えている
早く来いとでも言っているようだ 傾斜は7〜80度あるが僅か7〜8mのガバで攀じれそうな壁であった
アイゼンを外そうか迷ったが着脱が面倒なのでそのままで攀じることにする
手袋・アイゼン着装でもホールド・スタンスともにしっかりしていて
30数年前には もっと不安定で崩壊・剥離の恐怖から慎重に攀じた記憶が蘇った
その後 多くの登攀者を迎えてポピュラーなルートになっただろうからか?
不安定な箇所も無く 残地ピンも途中に2〜3本確認できた
ノーザイルの自分には活用の余地は無かったが
下降も出来そうなルンゼ |
茶臼岳を望む |
峰の茶屋を望む |
最後のピークを目指して |
最後のピークより朝日岳を望む |
東に1896m峰を望む |
無事にピナクル上に登った後は8m位の80度はあろう下降が待っている
当然アプザイレンで降れる訳でなくクライムダウンであるが緊張する
急傾斜であり落ちれば両側のルンゼまで飛ばされることは必至であろう
手掛かりは大きいのだが溶岩独特の何とも奇妙なホールド・スタンスである
ガバであるが剥離崩壊をするのでは?との恐怖が一番大きい
ノーザイルの一番の泣き所だろう
昨今のフリークライムで剥離崩壊のあまり心配無しでも攀じれる岩場ばかり攀じている
クライマーは そう言う判断をどの様にして学んでいるのだろうかとも思った
若き日にボロ壁ばかり攀じていた私にとっては計り知れないところです
朝日岳の肩を形成するバットレス |
朝日岳へのリッヂ |
1816m峰南壁 |
ギャップより上方のピナクルへも10m位の80度壁を攀じねばなりません
下部ピナクルの壁よりは こちらの方が手強い
しかしアイゼン手袋で攀じるせいでもあろうが2〜3mはW位には感じられるであろうか?
ここも残置ピンが2〜3本あったが未活用
無事に上部ピナクルを突破して50m位雪稜を登ったところで季節風(約20m)を避けて
東側の風を受けぬ岩陰に腰を下ろし安堵の大休止とする
すると 何と! 事も無かろうに そこで携帯電話のアラームが雄叫びを上げた
浪速のWEB友(中年女性)からだった
何時ものようにごちゃごちゃと世間話をし始めたのだ(15分以上は続いた)
白状するしかなかろう と 今何処に居てこの電話していると思うの?
零下15度の世界に居るんだよ! 長話してると凍死してまうよ! と言わざる得なかった
そんなこんなで1時間以上の正しく大休止となってしまった
零下15度(体感温度はそれ以上)でも晴天の雪山は気持ちが良い
時間の経ることを忘れさせてくれるのだから
東南稜を振り返る |
東南稜と茶臼岳 |
当初は正午までに山頂到達できれば上々と高をくくっていたが時間の経過は無情である
しかしマイペース登山に徹する私にとっては長きに山中に居れること自体が快感であり満足感であるのだ
早く登る事だけが登山ではない 何時もそう思っている
長きに渡ればそれだけ山に親しめるのだからと時間の浪費を言い訳するように自問自答する自分が居た
ピナクル上はガレが雪で固められた傾斜も緩い斜面が続き最後のピークに達する
そこから草付き混じりの雪稜が頂上直下のクロワールまで導いてくれた
山頂直下のクロアールは岩に雪が薄く纏わりつき一部ベルグラ化した箇所もあり20m位だが緊張する登攀が続いく
無事クロアールを突破したら意外と目前に山頂があったのは嬉しかった 山頂の直ぐ下だったんだなぁ〜
朝日岳山頂 |
山頂にて |
山頂には人は居らぬだろうと思っていたが地元の登山者(40歳代)が1人カメラを構えていた
しばらく登山談義など交わしながら15分程度の至福の一時を過ごす
別れ際に自分は還暦を迎えると言うと驚いていた
そうだろうなぁ〜 アラ環が朝日岳東南稜をノーザイル・ノーバイル・ノーヘルで攀じてきたのだから
午後になり季節風も緩み 程好い山頂での一時を名残惜しみつつ下山を開始した
3年前は剣ガ峰手前より明礬沢を下降したが今回はトラバースルートを忠実に峰の茶屋まで辿る
峰の茶屋手前にて今日初めて食物を腹に入れることができた
山頂で一緒だった地元の登山者が挨拶しながら下山して行く
これで私が那須山中にいる登山者中でラストになってしまった
気は楽だ! 後は下るのみ しかし足にも疲労が忍び駐車場まで1時間30分も労してしまった
途中では今日2回目の携帯のアラームが鳴る。 今度は地元那須のWEB友からだった
今日 朝日岳を登っていることを知らせていたために心配して電話してきたのだ 嬉しいような?
こんなところでよぅ〜 とも思ったが現在位置を告げて後ほど電話する事を約束し早々と切る
駐車場には登山者の残置車両は皆無で本当のラストを実感しました
まだ薄暮のPM5時までに下山できたのだから良しとせんとなぁ〜
後は入浴済ませて今日中に帰宅できれば めでたしめでたしだ!
なのに 鹿の湯が3月一杯改装のために休業だと(ショック)
そこで小鹿の湯に行くが そこも満員で一見様の入浴はご遠慮下さいとの看板
あぁ〜あ(嘆) 那須まで来て温泉入浴も出来ずに帰るのかよ!
まぁ〜仕方あるまい そこで無事の下山をWifeに連絡し入浴の準備を依頼した
朝日岳東南稜全景(赤線が今回の登攀ルート) |
今回の登山は今の自己体力・気力が如何ほどか?をバロメーターにすることと
今後の山行のトレーニングも兼ねていた
まだ もう少しは攀じれる気はするが体力・気力が一番のキーポイントであろう
楽しかったよ! まだまだ攀じれる気もしてきた(*^_^*)
東南稜よ! ありがとう
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