「関東名山の山旅」 おいらくの山日記        群馬県・新潟県

                                                上信越国立公園

 

2007年8月12〜13日(月)    同伴者 なし      (電車利用夜行日帰り)

 

自宅 14:30===東京駅===JR高崎・水上駅乗り換え===20:42土合駅---21:15谷川岳登山指導センター(泊)

谷川岳登山指導センター 03:15---04:20一の倉沢出合04:50---ひょんぐり滝---06:10テールリッジ取付

07:00中央稜基部07:10---07:20南稜テラス07:35---本谷バンド---07:45二ルンゼ取付---

09:25ザッテル---Bルンゼ---10:25オキノ耳---トマノ耳---(西黒尾根〜巖剛新道)---12:15マチガ沢出合---

(一の倉沢出合往復)---谷川岳ロープーウェー===(タクシー)===JR水上駅===新前橋===JR桐生駅

 

谷川岳の地図   登山コース

 

 

出合からの一の倉沢                    

 

世界一の遭難者数を誇る魔の領域へ足を踏み入れることを結婚を機に封印していた

 青春時代を燃焼した想い出の一の倉沢を忘れられず30年ぶりにクライムしました

若き日ほとんどのルートを踏破しているので地形は脳裏にインプット済み

素晴らしさも恐怖感も全ての記憶が甦えってくる

この計画は数年前から心の中で燃え続けていた野望でした

 

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ホームから地上まで486段(10分)の階段

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土合駅は無人駅となっていました

 

夜行列車を無くしてしまったJRには登山者の一人として物申したいのですが

登山者の減少で採算が合わないのか?新幹線を利用させたいのか?どちらにせよ復活させていただきたいものです

日本一深い所にあるホームから地上駅舎まで486段の通いなれた階段を登ることから登山は始まる

地下ホームの標高は583m、地上駅舎までは標高77mを10分かけて登らねばなりません

 

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夜明け前の一の倉沢出合

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夜明けを待って出発

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水流沿いに奥を目指す

 

一夜を登山指導センターの外でビバーク(野営)して午前3時起床、3時15分に一の倉沢目指して歩き出す

今回の計画は現在の自分にできる最大限の登山を目指しました

ルートに一の倉沢では一番易しいとされている二ルンゼ〜からBルンゼと決めました

しかし登り方は一切の登攀道具(ヘルメット・ザイル・カラビナ類)を使わず、パートナーを得ずに

自らの足と手だけで攀じ登る方法を選びました

そして選択したルートは谷底を一の倉沢最奥まで登り詰めることができる最長のルートです

日頃考えていた登山とは?という自分の持論を現在の自分に実践できる最大限の登山をしたい

との想いから計画をした次第です

 

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岩壁はガスの中でした

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アプローチに残置された補助ロープ

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下部の峡谷もなかなかの難所

 

一の倉沢へ入谷して通常はひょんぐり滝周辺の峡谷は右岸の高巻路を利用するのであるが

今回はひょんぐり滝周辺も水流に限りなく近いところを登ることにしました(ノーザイルではかなり危険地帯です)

 

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高巻き路にはフィックスロープ

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高巻きせず忠実に水流を追う

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谷底の残雪

 

もう二度と訪れることもないのではと思うと、今日一日を最大限楽しまねばと思った

その表れが、ひょんぐり滝を高巻かないで登ることでした

ここで時間を消費して上まで登れなくても良い!そんな気もしましたが

意外と早く突破することができ自分に拍手を送りたい

 

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水流沿いのノーザイルクライムは緊張の連続

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テールリッジ末端が見えてくる

 

上部を仰ぐと朝陽がガスを上へと押しやりながら輝き始めました

素晴らしい天気になりそうだなぁ〜と思うも間もなく雲ひとつ無い青空が展開していた

その後の灼熱地獄が待ち受けているとは朝の冷気の中では感じ取れませんでした

 

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上部が朝陽に輝き始める

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ひょンぐり滝

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二の沢と滝沢リッジ

 

 

見る見る間に朝陽も強い陽ざしに変わり真夏のクライムを応援してくれているように・・・

 

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一の倉沢の奥壁群

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一の倉沢の奥壁群

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圧倒的な衝立岩正壁

 

仰ぎ見る岩壁群は若き日に見慣れた風景ではあるが感慨無量です

 何十回も通ったテールリッジを登り出すと、やたら目に付くのがフィックスロープのオンパレード

30年前には下降用の支点くらいしか無かったのにフリークライム全盛の昨今に何故??

テールリッジも補助ロープを使用しなければ登れないような登山者は入谷の資格はないのでは?

懐かしかったのは今にも薄っぺらで崩れそうな手掛りにしていた岩が昔と何ら変わらず存在していたことでした

 

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コップスラブ

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テールリッジより衝立スラブとコップスラブ

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滝沢リッジ

 

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滝沢スラブの威容

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テールリッジの上部には衝立岩正壁

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国境稜線まで続く奥壁群

 

先行パーティーにはプロガイドに引率されながら(出合からアンザイレンしながら)登る熟年登山者がおりました

そんな姿は我青春時代には考えられないスタイルでして首も傾げたくなる姿でした

登山は自力で登ってこそ楽しめ価値が見出せるものだと思う持論からすれば当然のことでしょうか

 

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先行するプロガイド引率のパーティー

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先行するプロガイド引率のパーティー

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滝沢スラブが近づく

 

過去に3回登った衝立岩正面壁を眺めても登攀欲も闘争心も甦えない自分に歳を感じ

そして垂直で圧倒的に聳える大岩壁を目前にして恐怖感をも感じず寂しくなりました

 

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真下より仰ぐ衝立岩正壁

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一の倉沢出合を見下ろす

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対岸には白毛門と朝日岳が

 

いよいよ今日の一番の危険地帯と考えていた烏帽子岩奥壁下部を南稜テラスまでのトラバースです

なぜならヘルメットを持参していない為に落石の恐怖がある訳ですが先行パーティーが取り付いていない為

自然落石だけを注意すれば良い訳でひとまず一安心はしたが南稜テラスまでは一息で先を急いだ

 

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滝沢スラブと今日のルート二ルンゼ

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中央稜基部にて

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中央稜基部より南稜テラスへ向かう先行パーティー

 

南稜テラスでは十分に休憩をして若き日には写真等を撮る余裕がなかった一の倉沢を堪能するように

デジタル保存することができました(天気が良いので良く撮れました)

 当日の入谷者は南稜の3人パーティーと烏帽子岩奥壁変形チム二ーを3人パーティーと私の7人だけでした

 

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烏帽子岩基部にて登攀準備をする後続パーティー

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烏帽子岩奥壁全景

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南テラスより下部を望む

 

南稜テラスから先は我一人きりです。上部からの人為的落石からも開放されマイペース登山ができそうです

いよいよ登攀ルートの二ルンゼへ向かうが草付帯の本谷バンドを下らねばなりません

ノーザイルのスリルある危険地帯が始まる訳です

 

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南テラスより二ルンゼを望む

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本谷バンドより滝沢下部を望む

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二ルンゼより望む5ルンゼと6ルンゼ

 

無事に本谷バンドを下り気味に横断して二ルンゼ取付に達する

二ルンゼは取付からチョックストーン上部までの150mが核心部です

ノーザイルの自分は墜落は許されません。一歩一歩足場手掛りを確かめ十分な時間を使い

確実に高度を上げるが恐怖感も伴い意外と時間を浪費してしまいました

150mを登るのに1時間30分ほどを要したようです

 

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二ルンゼより望む白毛門

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二ルンゼより望む南稜

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南稜上部と6ルンゼ

 

チョックストーンを越えれば傾斜も落ち墜落の恐怖からも回避された

ザッテル越えの周辺は地形が不明瞭でどこがザッテルなのか判断できないほど広々している

岩壁地帯は照り返しも加わり気温も30度前後まで上昇し灼熱の嵐にさらされ水分補給もいつも以上であった

草付交じりのルンゼは難易度も低下して順調に高度が稼げ

 

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二ルンゼの核心部

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二ルンゼより望む南稜

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4ルンゼと5ルンゼ

 

国境稜線直下は傾斜が増した草付を慎重に登るが暑さのせいでペースが上がらない

稜線に出たのはオキノ耳まで直ぐの地点でした

暑さのせいで一刻も早く下山したいとの思いで肩の小屋にも立ち寄らずに西黒尾根を駆け下りました

巌剛新道からマチガ沢出合へ下り、夜明け前で一の倉沢全景の写真を撮れなかった為に

写真撮影に一の倉沢出合まで往復して帰途につきました

谷川岳ロープウェー乗り場からJR水上駅までタクシーの相乗りで向かった

JR水上駅前は意外と寂れており往時の活気を感じません

若き日には必ず立ち寄った豊田食堂も今は無く寂しさも感じました

 

今回の登山は私の長年描いていたスタイルを実現させた多少無謀な計画であったかとも思うが

計画通りに踏破できたのだから無謀という二文字は除外したいと思います

谷川岳一の倉沢とは登山を知り尽くした者のみに入山が許される聖域ですから

くれぐれも安易な入山はしないでくださいね!(登山は全て自己責任ですから)

 

 今回の登山で改めて自己の体力・気力の低下を感じ登攀からの引退を決意しました

二度と登ることが無くても悔いは在りません

一の倉沢よ! ありがとう そして さようなら (*^_^*)

 

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